SDA東京中央教会

牧師からのメッセージをお届けします。

「わたしの子」

2017年11月 東京中央教会牧師 藤田 昌孝


朝鮮戦争時代のこと、一人の韓国人女性とアメリカ人兵士の間に、赤ちゃんが生まれました。しかし、アメリカ兵は、母子を残してアメリカに帰ってしまいます。  

母親はわが子を7年間、必死で育ててゆきますが、ついには町に捨ててしまいます。7歳の女の子は、2年間道端で暮らし、9歳で施設に保護されます。そこで彼女は赤ん坊の世話役として働かされました。  

そんなある日、クリスチャンのアメリカ人夫妻が、養子にもらうために施設を訪れます。夫妻は親のない赤ちゃんを一人一人抱きかかえては、涙を流していたそうです。

すると、ご主人の目に、部屋の片隅にいる9歳の女の子が入りました。彼女の顔と身体は傷や腫れ物で膿んでいます。全身、ノミとシラミだらけ。体重も9歳で15sもありませんでした。

ご主人は彼女にそっと近づき、大きな温かい手を彼女の頬に当て、やさしくなでながら、涙して言いました。 「この子が私たちの子だ」。  

これこそ、私たちの主イエス・キリストです。罪と争いとで汚れ、傷つき、ぼろぼろになっている、そんな私を見つめ、そっと近づき、汚れた私たちの内側に小さく隠れておびえている本当の私にそって触れ、「私の目には、あなたは高価で尊い、私はあなたを愛している。あなたは私の愛する子、私はこれを喜ぶ」と言ってくださるのです。  

しかし、生涯一度も今まで愛されたことのない彼女は、どうしていいか分からず、とても考えられないようなことをしてしまいます。

彼女はどうしていいか分からず、思わず彼の手を乱暴に払いのけ、彼の顔につばきをかけ、部屋を立ち去っていったのです。  

彼女はそんなひどいことをした自分を憎み、その晩、絶望の中ベッドで泣き続けます。  夫妻は、次の日もその施設を訪れ、彼女を優しい目で見つめ、再び、彼女に触れようとします。

9歳の女の子は今度もどうしていいかわからず、その手を払いのけようとします。するとご主人は彼女の手をつかんで、彼女を自分の厚く大きな胸に引き寄せ、しっかりと抱きしめました。

彼女はその胸の中でさえ、彼をたたき、必死に抵抗を続けました。しかし彼はそんな彼女をけっして離すことなく「I love you. I love you.」と言いながら、涙を流しながら、抱きしめたのです。

彼女は大きな胸の中で、生涯初めて声を上げて泣き、その日彼らの子になったのです。  

彼女はステファニーと名づけられ、彼女もまたキリストを信じ、クリスチャンとなりました。結婚して子供も与えられ、幸せな家庭を築いています。  

私たちの神様は、何度私たちがその温かい手を払いのけ、つばきをかけようとも、変わることなく、あなたを愛し続けてくださいます。

あなたの傷つき痛んだ心と人生に、平和と喜び、愛と許しを与え、わが子として、お迎えくださろうと、今、私たちの前に立っていてくださいます。  

今日も、明日も、永遠にあなたを訪ねてこられるお方です。